すっぽこ通信 7/2号

2週間も通信に間が空いてしまいました。
やきもきしてらした方、ホッとしていた方(笑)
様々だと思いますが、相変わらずすっぽこってましたよ。

さて、本日のすっぽこネタはすごいです。
かつて義母がメニューに見たという
小出屋本店に行ってきました。

昼時を逃したのが逆に幸いし、
ゆっくり話を聞くことができました。

アホの極地を突き進んでいる、a主任研究員も
最近は、すっぽこアタックの開発に余念が無いのか、
日報を送ってきません。こらこら。

よって、場末の映画館のような2本立て、3本立てではなく、
今回は1本立て。スペシャルロードショーでございます(笑)
 
 

その日、小出屋本店に着いたのは、2時頃。
お客さんは僕の他、2組。
それも注文したラーメンを食べているうちに、
みなさん帰ってしまいました。

お店に入ってすぐにお品書きをチェックするも、
「すっぽこ」の文字は見当たらず。
ただ、ここは、あの小出屋支店の親店。
きっとすっぽこについての情報を得られると確信し、
会計時におかあさんに聞いてみた。

「“すっぽこ”ってわかります?」

すると、

「懐かしい名前だなぁ、久しぶりにその言葉耳にした。
 ちょっと、ちょっとおとうさん、すっぽこだってぇ」

と、奥にいるご主人を呼んでくれました…。
 
 
■三代続く老舗「小出屋本店」の主が語るすっぽこ

「すっぽこの研究してるんですよ」と話を向けると、「どこで見たのや〜?」とご主人。これまでのいきさつや経緯を伝え、急遽、立ち話インタビューが始まった。
小出屋は、今のご主人で三代目、山形市内でも指折りの老舗と言っていいだろう。

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うちは、この近所ばかりだが、何度が店を移転して、
この店になってからだいたい45年ぐらい。
その頃にはもうメニューからはずしていた。
それでも、年配の人からは
「すっぽこないのか」と言われ、作ってはいたが、
全く作らなくなってから10年以上になる。
なぜ、出さなくなったかというと、
特定の年配の人しか頼まないということもあったが、
一番の理由は手間がかかること。

すっぽこのあんかけは、そばつゆに、
くずを入れて丁寧にかき回しながら作る。
ちょっとでも手を離すと、すぐ焦げてしまったり、
くずが溶けてただのそばつゆに戻ってしまう。
だから、かかりきりになる。

すっぽこ一つだけ作るのだったら、
別に大変ではないが、
いろんな注文がいっぺんに来ると、
すっぽこに付きっきりになるので、
他のメニューを作れない。
じいちゃん、ばあちゃんも店に出ていた頃は
出していたが、人手が少なくなってからは、
時間もかかるし、とてもこなせないので、やめた。
今でも70歳以上の人からは、
「出していないのか」とたまに聞かれることもある。

出していた当時の具は、
鶏肉、油揚げ、みつぱ、ゆで卵、イクラを入れていた。

ただ、どうして「すっぽこ」と言うのは分からない。
とにかく古い店でしか出していないようだし、
知らないだろう。

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すっぽこが消えた理由には、二つあったのだ。年配者しか頼まなくなったという客側の事情、そして手間がかかりすぎるという店側の事情。小出屋のおとうさんが言うように、数多くの注文をこなさなければならない昼の稼ぎ時には、すっぽこは大きな負担になった。
かつて、外食産業が少なかった当時、小出屋さんは、山形市全域に出前を届ける大店であったという。そんな店が4、5軒しかなかったのだから。
それが、高度経済成長とともに飽食の時代が到来。そば、ラーメンは言うにおよばず、世界中の食べ物があふれる今、店にとっても生き残っていくための犠牲を余儀なくされるのは、致し方のないことだと思う。そして、その犠牲になったのが、まぎれもなく「すっぽこ」であったのだ。それを「淘汰」という言葉で済ませたくない想いがある。強者だけが生き残る世の中が正しいのではないように。弱者も、健やかに、笑顔で生きていける世の中こそが豊かなのではないかと思うように。
時代の大きなうねりの中で姿を消していった「すっぽこ」、スローフードだからという理由で店のメニューから外されていった「すっぽこ」は、スローフードに注目が集まっている現代においてこそ、一つのフラッグシップ的存在になり得るのではないか。そんな気さえしている。

…なんて、久しぶりの通信ゆえ、ちょっと肩に力が入り過ぎたか…。
しかし、すっぽこ衰退は「おいしくない」からではなく、「手間暇がかかる」からという有力な証言が得られ、ひとまず胸をなで下ろす所長であった。小出屋のおとうさんは言う。「けっこう美味いよ」。
 
 
すっぽこ研究所では、引き続き「すっぽこ」情報をお待ちしています。