すっぽこ通信 12/1号「品川家」編

厳しい冬を目前にしながら、
すっぽこをいつでも食べられる幸せを噛みしめつつ、
日々過ごしているすっぽこ所長です。

実は今回の品川家さん、
ラーメンがもうちょいって感じの味だったので、
すっぽこ、どうかなーと一抹の不安があったのだが、
さすがそばがメインの老舗、
感動の出会いが待っていましたとさ♪

■品川家さんでは「“志”っぽこ」なり

 昼になっても出てこない「へ」研究員を置き去りにして、a主任研究員と現地に向かう。いつものようにテンションが異常に高い二人。このすっぽこ現地調査も回を重ねるごとに、「食べられるだけで幸せ♪」から、「美味しくないとヤダな〜」に気持ちが変化している。人間というのは欲深い生き物です。



*左写真にちっちゃく写っているのが「志っぽこ」看板を写真に納めているa主任。実際もこれぐらいちっちゃい(笑)

 品川家さんに着くと、a主任研究員が目ざとく店の外に出ているすっぽこ看板を発見。「堂々とアピールしてますな〜」とよく見るとそれは「すっぽこ」ではなく、「志っぽこ」。呼び方については山形県内でもいろいろあると、過去のすっぽこ通信でも書いてきたが、お店では、初の「すっぽこ」以外の品名である。
 さて品川家さんのしっぽこにはどんな「志し」を感じることができるのだろう…。
 
 
■激混みにビビる所長とそれをなじるa

 店に入ると、さすが市役所の真裏という場所柄に加え、昼時とあって満席。支払いを済ませた客とちょうど入れ替えで席に着く。(すっぽこアピールのチャンスですぜ!所長!!)とa主任研究員が悪魔のように囁く。言っておくが私は「人見知り」のうえに「しみったれ」なのだよ。誰も信じないかもしれないが、そうなのだよ。
 おばちゃんがテーブルの上を片づけた後、何度か忙しく行き過ぎる。タイミングを見計らい、声をふり絞って…



   しっぽこ、ふたつ



   

え〜〜っ な なんすかそれぇ〜



 おばちゃんが注文を確認して厨房に戻ると、a主任研究員から批難轟々…。せっかくなのになんであんなにアッサリ言うんスか全然アピール度足らないッス村形屋んときの声の張りはどうしたんスかも〜信じられないッス。
 あー、だから言ったであろう。私は元来人見知りでしみったれなのだ。
 憤懣やる方ないa主任研究員をなだめつつ、志っぽこ登場を待つ。急ぎ会社に戻る用事があったので、ちょい焦り気味だが、注文してしまった以上しかたがないと、あきらめつつ20分弱。うやうやしく(そう見えた)おばちゃんが運んできた志っぽこは、まさに昔ながらの正統派と呼べる佇まい!蓋付きの木の塗り椀に木のレンゲ。寿屋本店にかなり近い。



蓋を取る。なんと!そこにはなんと雅な情景が!
 
 
■色香漂う京女の佇まいににやりと


 具材の配置、色彩、ゆるめのサラリとしたあんかけ、細めのうどん…美しく上品かつ楚々とした気品を纏いつつ、ふと艶やかな色気さえも醸し出す品川家「志っぽこ」。a主任研究員流分類に習えば、これはまぎれもなく「女すっぽこ」である。京阪がすっぽこの起源であるとすれば、こう表現するのは変なのだが、まさに「京風 すっぽこ」と呼ぶにふさわしい。
 食べ進めるうちに、鹿威しのカコン!という音や、舞子さんの優しげな京言葉、市中を流れる鴨川の水音がどこからか聞えてくるような錯覚さえ。それほどに雅〜であ〜る。



 具も実に多彩。飾り切りされた蒲鉾にはじまり、鳴門、筍、麩(これがまた味が染みていて美味)、海老、鶏、玉子焼、椎茸が、あんかけとうどんの合間にあって、その存在を慎ましやかに主張し合っている。柚子の香りが麗しい。
 これまで紹介したすっぽこが、どちらかというと庶民的で素朴な味わいだったのに対し、特別な日、晴の日の食べ物。男同士が粗野にむさぼり食うものではなく、秘めた関係の男女が密やかな逢瀬の淵で互いの箸を濡らすような食べ物。それが、品川屋志っぽこだ。
 もし、一連のすっぽこ話をご覧になっているご奇特な御仁で、食べてみたいがあんかけデロデロッにはちょっと抵抗が…という方は、特に女性には品川家志っぽこをぜひにとお勧めする。ぜひにである。



■そば処 品川家
山形県山形市旅籠町2-1-26(山形市役所裏)
023-622-2287
志っぽこ:750円

*「すっぽこ研究所」では、山形県の「すっぽこ」について、
歴史的・文化的・民族学的研究に深く“楽しく”取り組んでいます。
*皆様からの「すっぽこ」情報をお待ちしています。