すっぽこ通信 11/19号「村形屋」編

毎日寒くて、すっかり、すっぽこシーズン入り。
すっぽこの美味しさが本領を発揮するのは、これからです〜♪

さて、以前、山形のラーメンとして紹介した村形屋は、
早くから「すっぽこあるよ」と情報をいただいていた店だ。

ご好意で作っていただいた小出屋に始まり、
寿屋本店たけだ食堂に続くすっぽこ実食リポート第4弾である。

■すっぽこオーダーに慣れてきたぞ



 いつものコアメンバーで、肌寒い風が吹くなか、駐車場所から村形屋に向かう。そしてやっぱりいつものように、どこか研究者としての理性と冷静さを装いながら、期待に頬は紅潮し、足取りも自然に軽ろやかになる。村形屋の暖簾をくぐる。今日はメニューを見るふりなどしないのだ。堂々と頼むのだ。そう心に決めていた私は、テーブルに場所を確保するなり、そこはかとない大声で(笑)言うのだった。

「すっぽこ3つ!」



 すると、隣のテーブルに座っていた二人連れの会話がふと途切れた。横目でこっそり様子を窺うと、同時に顔を上げ、壁に書かれたメニューの確認作業に追われている。今、隣のいい男が注文した「すっぽこ」がにわかに気になってきたようだ…。

「“すっぽこ”だって…」
「“すっぽこ”ってなに?」
「あ、ほら、メニューにある」
「ホントだ」
「なんだろうね、どんなんだろうね?」
「知らない、知らない」
「おいしいのかね、“すっぽこ“って」


…などと話している。(実際は、ちゃんと聞き取れないぐらいの小声でヒソヒソと話していたため、上のセリフは“こんな感じの”といったニュアンスで受け取ってほしい)
 その時、私とa研究主任は、抱き合い、ハイタッチしまくり、ガッツポーズの嵐…をすべて心中でこなしながら、ただこみ上げてくる笑顔で見つめ合い、普及活動を成し遂げた満足感に満たされていた。

■強烈なあんかけがうどんを羽交い締めする



 ほどなく、テーブルにすっぽこが供された。たけだ食堂のすっぽこは、第一印象として、酢豚を思わせるようなあんかけ色だったが、村形屋は明らかに違う。濃い!一通り、撮影などの研究活動をこなし、箸をあんかけのなかに差し入れる。ところが、うどんを持ち上げようとしても持ち上がらないのだ。あんの粘りが強い、というより重い!どれぐらい重いかというと、持ち上げようとするうどんがちぎれるほどである(笑)



 肝心の味は、抜群。最も私の好きなタイプで、生まれてからこれまで食べたすっぽこの中でも、間違いなくベスト4に入るだろう。具はどちらかというとシンプル。寿屋本店のすっぽこもそうだったが、鳥肉、かまぼこ、ネギ、ごぼう、そして“しっぽく”の由来でもあるらしいしいたけの5品のみ。たぶん、これがすっぽこベーシック具材なのだと思う。しかも、鳥そばなどに入っている鳥肉よりも、ずっと旨味が引き出されているのも、他のすっぽことの共通点だ。



■改めて言おう。すっぽこは美味しい

 すっぽこの由来、伝承については現在も着々と研究を進めている。もちろん分からないことも数多く、解明できない部分もあるだろう。しかしだ、こうして目の前にあるすっぽこを実際に食べて思うのは、美味しいという単純な満足感だ。蘊蓄を傾けながらの食の楽しみがあるとすれば、その一方にあるのは理屈抜きの美味しさに出会う楽しみだ。
 すっぽこは理屈ではない。ただ、美味しい。そのことを多くの人に知ってもらえたらと思う。山形県内に、デロッデロッとすっぽこをすする音が響き渡る日が一日も早く来ることを願って止まないすっぽこ所長である。

■村形屋:iタウンページ地図情報
山形県山形市薬師町2-9-16
023-622-1747
11時〜18時(不定休)
すっぽこ:700円